岩手県遠野市で100年あまり続く民宿「とおの」の4代目・佐々木要太郎氏。2011年には隣接してオーベルジュ「とおのや 要」をオープンし、その腕を振るう彼だが、どぶろくの醸造家でもあり、その原料の米を育てる米農家として三足のわらじを履いている。「権化」は、米農家だからこそ「なぜ酒造りには米を削るのか」という疑問から始まった。化学肥料による栄養過多で、米には雑味成分が増え削らざるを得ない。彼の造る米「遠野一号」は完全無農薬無肥料。極力削らずに酒を造る試行錯誤のなかで、米と糠に分けて発酵することを思いつく。そうして誕生した米、米麹、米ぬか、水のみで造られるという前衛的な酒は酒業界のみならず飲食業界にも衝撃を与えた。「権化 PEAT」は、米糠を藁焼きして使用し、一般的な日本酒醸造の約7倍である約半年もの期間をかけて発酵させている。スモーキーな香りが特徴で蒸留酒を思わせる濃厚な風味がありつつもクリアな味わい。前例がないということから国から認可がおりないも佐々木氏自らが何度も協議し、ついに酒税法を変えるなどその情熱を持って現代社会に大きな一石を投じた酒である。