凹燮轡洒劃驍さん(2022年4月20日)の日本酒「正雪」レビュー

正雪 純米吟醸 愛山
冷蔵庫から出したての冷酒

上立ち香は微量。微かに米粉を使った焼き菓子の生地っぽさに、樽っぽい香りと、ナッツぽい香りが乗っているように感じる。温度が上がって来てようやくバナナ？ってな感じ。

口に含むと甘口風の甘味が最初に来るが、それが膨らみはせず、微弱な酸味に移り、やや濃い目の旨味、そして弱めの苦味へと遷移する。特筆すべきは含み香で、上立ち香の弱さからは考えられないような、メロンともなんか違うんだけど（でもメロンとしか言えない個人的な語彙の問題）、とにかく華やかさを伴う。

キレは急斜面のようではなく、そこそこ角度が付いているものの、なだらかに感じる。アフターにはほのかな米のふくよかな香り。そのふくよかさが一瞬広がることと、上立ち香が何となく油分的にも思えたので、ロースハムを用意していたが急遽ベビーチーズトリュフ風味を用意し、一齧り。

結果としてはいわゆるマリアージュ的なラインには若干届かないものの、香りよりもむしろチーズの塩味がマッチしているように思う。香りの部分はアフターの米感がチーズを持ち上げてくれて美味しい。十分「合う」と言える範囲だと思う。

恐らく、古典的な家庭料理としてのフランス料理、つまりフォンドボーとかを使った野菜と塊肉の煮込みみたいなドカンと出て来るタイプが合う気がしてならない。想像するとヨダレが出て来る。必ずやってみると心に誓った。

正直、好みではないだろうな、と思っていたが、意外にも結構イケた。甘さに関してはどうしてもたくさん飲める感じはしないのだが、むしろフランス風料理を試すだけの猶予が十分確保出来て都合が良い。それまでは食前酒として活躍しそう。

甘旨フルーティージューシーみたいな愛山を飲んで来た人には物足りないかもしれないが、古典的な酒を好む人には、アクセントとしておすすめである。やはり静岡酒を醸す蔵にかかると、私のような偏屈にも美味しく飲める物になるようだ。

ちょい高いが、酒としてのクオリティは相当だと感じる。評価は4.5でも良かったが、個人的な好みを優先して4としておく。備忘録なので。