「静寂の中の満月」
石川・加賀ノ月・純米吟醸(満月)・精米歩合58%・五百万石・9号酵母
・この加賀の月「満月」も2012,2013にノーベル賞授与の晩餐会で提供された、ということなので少し調べてみた。どうも晩餐会で提供されるお酒自体は相当数のようで日本酒だけでも4種類?そりゃそうだね、一般のディナーショーでも選べるんだからだから晩餐会なら尚更のこと。で、それを毎回選定しているのはソムリエの担当会社らしい。情報量から考えておそらく彼らの評価もさることながらマーケティングの力も大きい。考えてみれば当たり前だけどノーベル財団が選ぶ栄誉なわけでは無かった(笑)。
・ちなみに加賀の月のグレートは本醸造が三日月、純米が半月、純米吟醸がこの満月、純米大吟醸が月光である。丸くて明るい方が格上なんですね。月を米に見立てるとより削った三日月が大吟醸なのだが、まあそれは誤解を生むか(笑)。
・さて満月のお味だが、静かに冷え込むような薄い吟香と飾り気のない甘みと酸味。上立ってくるような華やかさやふくよかさは抑えて、むしろそういうのは恥ずかしいことと言わんばかりにすっと目を伏せて消えて行く。上品といえば上品、暗いといえば暗い。しーん、としている。静寂こそがおもてなしと言われているようだ。ネーミングから考えるとそこは狙っているわけだから、9号酵母でも蔵によればこんな表情を作れてしまうことに驚く。
・このお酒は短調というかマイナーコード系が似合う。ベートーベンならどこか悲し気なピアノソナタ14番なんか絶妙だ (そしてそれはまさに「月光」と呼ばれる)。日本なら荒城の月。「春 高楼の 花の宴 めぐる盃 影さして…」意味不明の寂しさにこのお酒がピッタリすぎる。やっぱり狙ってつくってるんだろうなぁ。。十四代では心がウキウキしちゃって場が破壊される(笑)。このお酒とどこか幸福そうなモーツァルトも絶対に合わないと思う(笑)。
<旧サイトから引っ越し分のため日付は正しくありません>