あさ開 純米辛口 男の純米DRY
寒の戻りで、肌寒さを感じる夕暮れ。
会社帰りに寄った紀伊國屋で、
昔好きだった人とばったり会った。
あれから、何年経ったんだろう。
成績優秀で生真面目だった彼も、
いまは3枚目キャラで売っているようだ。
しばらく見つめ合い、同じ家に帰る。
顔を寄せると懐かしい匂い。
流行りの華やかな香りは纏っていない。
微かにフルーティで控えめな香り。
私から、ゆっくりと、口を付ける。
ああ、これだよな…と思う。
どこまでも真っ直ぐで正しい。
でもあまり面白味はない。
別にそれでも、良いのだけど。
きれいな印象を残して、私を通り過ぎた
彼は寂しそうに笑って言った。
ずっと評価は変わらないんだけどさ、
業界傾いてるし…いろいろやんなきゃね…
(そっちじゃないと思うんだけどな)
口にできなかった言葉を反芻しながら、
私はベッドを下りて、
残った空き缶をクシャッと潰した。
少しだけ、彼の匂いがした。
#あさ開は鑑評会12年連続金賞受賞中