その日は、体調が少し悪くて控えめに飲んでいた。いや、ほとんど飲めず、相手が酔っていくのをうらやましく眺めていた。
ちょっとだけ口にしたのは、夏の名残りの「三芳菊 夏の新酒 純米大吟醸 うすにごり 白猫ラベル」。白猫好きのしろこさんのためにあるような。
しゅわ、ぱちぱち、きゅん。
たまに、澱(おり)のところが、とろっと甘い。
おいしいな、と思っても身体が元気じゃなくて、たくさん飲めなかった。他にもこの日は「正雪」とか「カタカナマチダ」があって、飲み相手は私が酔う分も、酔ってしまった。
お酒って、同じペースで酔わないとさびしいな。会話も、気がつくと私ばっかり球拾いしていた。
結局、ひとを甘やかす側に回ってしまう。
公私ともに、いつも。
誰かお願いだから、私を猫のようにだらしなく甘えさせてほしい。
何も考えなくていいよ、と私の肩の荷物をひょいと受け取って、前を歩いてほしい。
そんな甘ったるい悩みに、白猫ちゃんたちの視線とラベルの言葉が刺さる。
この酒蔵のコンセプトでもある「Walk on the Wild Side(ワイルドサイドを歩け)」。
もう何十年も、もしかしたら産まれたときから、ヤバい方の道しか歩いてない。
これ以上、荷物を増やしてどうすんの、と後日の一人飲みで反省する。
しゅわ、ぱちぱち、きゅん。
あ、やっぱり美味しい。
そして、一緒に飲みたい誰かを思い出して、切ない。
……早く酔わなきゃ。