「山中酒の店」でディスペンサーでの量り売りがはじまったと聞いて、出かけていく。
「磐城壽 甦る」
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福島県浪江町から避難した方が、別の酒造で酒造りをして出した商品と聞いて、少し気持ちを引き締めて飲む。
その引き締めた気持ちを、ふっとほぐす口当たり。
軽やかで柔らかい。
荒れた野に、ふわふわとした黄緑の新芽が育ってくるような。
震災の半年後に、被災地で仕事があった。
仕事が終わった後、タクシーの運転手に「行けるところまで行ってください」とお願いして被災地を解説付きで回った。家の基礎しか残ってない、空っぽの町に家族が帰ってくることを期待した張り紙や、書き残しがあった。
壁が波でさらわれたアパートには、きれいに中が片付けられた部屋と、当時のままの部屋が並んでいた。
冷蔵庫に残る海苔の佃煮のびん、ぐちゃぐちゃの布団、携帯の請求書。
海水に侵され、引いた後の砂にまみれた「暮らし」がそこにはあった。
そこからでも、甦る。
いや、それは安全な場所からの詭弁に過ぎないな。
震災の後に、映画『千と千尋の神隠し』の主題歌を聴いて震えたことがあった。
♪生きている不思議 死んでいく不思議
花も風も街もみんな同じ♪
♪海の彼方には もう探さない
輝くものは いつもここに
私の中に 見つけられたから♪
失ったものを胸に、自分の人生や商品を輝かせようと諦めず、こうして美味しいお酒を作ってくれる人達がいる。
それを届けようと、ディスペンサーに置いて届けてくれる酒屋がある。
「再生」のリレーの終着点で酔っぱらうことしかできず、申し訳ない気がしたので、文章にしてみました。
特定名称
特別純米
酒の種類
生酒
テイスト
ボディ:軽い+1 甘辛:普通