日日
令和の時代に嘘のようなお家騒動に巻き込まれて「澤屋まつもと」の松本酒造を離れ、独立を余儀なくされた松本日出彦氏の待望の作品。
まるで自然の湧き水のような澄み切った透明感のある飲み口。僅かに乳酸系の香り。雑味は一切ない。甘味は穏やかで酸味は少しだけ立っている。
全体的に主張は控えめ。絶妙な火入れでフレッシュさとガス感、そして心地のよい苦味も僅かにあるので、食事に寄り添うタイプの食中酒として非常に優れていると思いました。
〈 2日目以降のレビュー〉
低アルという事もあり、水の如くの飲み口になってきました。それでも米の味があって酸味が際立ってきても、バランスは崩れないところが凄いと思いました。造りと火入れの高い技術とセンスを感じます。
どうしても、復活劇の立役者でもある佐藤祐輔氏の「新政」と比較してしまうので蛇足ですが覚書きで少し書きます。
どちらも生酛で低アルで酸味を活かした造りですが、「新政」はご本人曰くオフフレーバーをも活かした造りをしたいとの事で、スッキリとした透明感の中に良い意味で、木桶の香り等の雑味を感じる味わい深さがあります。
一方で「日日」は雑味を極力排した、洗練された透明感がある味わい。酸味も生酛にしては穏やかです。ただし、無色透明という訳では無く、その中に生酛の乳酸系の香りと仄かな甘味があります。
淡麗ながらも米の味を感じさせる旨口であり、生酛で低アルで最近のトレンドを追ってるように見えて、アプローチは王道だと思いました。
また、米も兵庫県・東条地区の山田錦を使用していて、テロワールよりもご自身の求める味に重きを置いている所も大きな違いじゃないでしょうか。