「不老泉 特別純米酒」
いつも上原酒造さんに立ち寄った時に確認する、冷蔵庫の左上隅。
そこには龜龜覇(かめかめは)シリーズが鎮座し、いつもこっちを見ています。
龜龜覇とは亀ノ尾で仕込んだ古酒シリーズ。
そして中でもいつか飲もうと思いつつ手を出さないできた、フラッグシップ「凛」。
今は亡き山根杜氏が仕込んだ平成10BYの酒です。
今回ようやく意を決して対決しようと思ったわけですが、いつもの場所に凛がいません。
皇(すめらぎ)、吉はおるのに。
「あぁ、もう売れてしまいましたわ」
と、上原さん。
しまった…。
買うチャンスなんていくらでもあったのに。
10BYにビビって手を出しきれなかった自分が悔やまれます。
以前に鼠と「凛いっとくか!?いやいやまだちょっと」などと話していた自分が恨めしい。
もう二度と会えないのか?
そりゃ25年前のタンクが空になったらどうにもできないけどな。
でもたかが酒なのに、なんなんこの寂しい気分。
「…。」
しばらく言葉を失った後、不老泉特別純米、にごり原酒、旨燗を購入。
3本で凛1本分の値段にも届きません。
この特別純米酒は他の不老泉とはラベルも違って値段も安い、いわゆる地元民の晩酌酒カテゴリー。
しかしそこは不老泉、しみじみ旨い。
冷やでも燗でも唯一無二の不老泉味。
山根杜氏の魂を受け継いだ横坂さんの想いが、ここにもしっかり根付いているのです。
帰り際、上原さんがボソッと言いました。
「大津やったらあそこにあるかもしれへんなぁ。」
「!?」
続く。